アマチュア野球へのMLBの示唆
こんにちは。
DeNAの筒香嘉智選手が1月25日に日本外国特派員協会にて記者会見を行いました。
日本のアマチュア野球での指導者の指導方法や勝利至上主義といわれるあり方など球界全体が抱える問題点について警鐘を鳴らすべく意見を述べていました。
また、先日このブログでも取り上げましたが、新潟県の連盟による春季大会での球数制限や高野連による夏の選手権大会での日程や開始時間に配慮をした運営を発表されるなど、少しずつではありますが高校野球やアマチュア野球を取り巻く空気が変わってきた感じもします。
これらの話題の中で、最近注目の話題の一つが投手の「球数制限」です。
高校野球での実施の可否などについて賛否両論ありますが、ちょっと想像してみても下記のような懸念点や問題点もありそうです。
・球数を多く投げさせて降板を促す戦法がとられるのではないか
・投手層(人数とレベル)でチーム間で大きな差がつくのではないか
・ますます私立と公立の差が開くのではないか
これは失礼に当たるかもしれませんが、球数制限があったら、昨年の夏の甲子園大会での金足農高の躍進も無かったかもしれないという事も考えられます。
しかしながらルールがあれば、そこに適応するように調整したり、努力していくのは必要な事ですし、何事も予め与えられた条件の中で最大限の努力をする事は一般の社会と同じかもしれません。
果たしてこの先ルール化に繋がっていくのだろか?なんて考えていましたら、たまたま見たMLBのサイトにPitch Smart Guidelines という記事が出でいました。
かいつまんで説明すると、若い選手が腕(肩や肘)を痛めてしまうことから守るためにアメリカの野球協会やMLBが協力して投球に関するガイドラインを提示しています。
そのガイドラインは多くの研究に基づいて作られています。
どのような行動が怪我の可能性を高めるかなど、怪我に至る危険因子について多くの知見を持っているようです。
示されている危険因子を具体的にあげると
・球数をカウントしない、制限しないこと
・同じ時期に複数のチームで投げること
・1年に8ヶ月以上、競争下のゲームで投球すること
(オフが短いことは危険因子となりうるということでしょうか)
・連投すること
・同じ日に複数ゲームで投げること
・小さいころからカーブやスライダーを投げること
などが危険因子として取り上げられています。
また、ちょっと変わったところでは
・スピードガンを使用すること
も挙げられています。スピードガンで測定すると、必要以上に力んで怪我の原因になりかねない、といったことでしょう。
ガイドラインではこのような避けるべき危険因子を明示するだけではなく、年齢別に具体的な投球制限数も明示しています。
例えば、13-14歳であれば1日95球を最大として、1日休みを入れた場合は次回は21-35球まで、2日休みを入れた場合は36-50球まで、といったように具体的な数字も出しています。
7-8歳から19-22歳まで細かく7つの年齢群に分けて示されています。
興味のある方はこちらのリンクをどうぞ。
このあたりはアメリカらしく合理的な印象を受けますし、このような研究が行われているのはさすがです。
日本でも少しずつアマチュア野球を取り巻く環境の変化が起こりつつあります。
まだまだクリアしなければならない課題も沢山あるかもしれませんが、若い選手たちを守るためにも何かしらの取り組みが必要であるという課題の認識は広がっていきそうです。
まずは、球界として何を優先し、何を大切に考えるべきか、といったことに対する共通認識を持つことがスタートかもしれません。その共通認識が広がれば、行うべき対策やその目的もすんなりと受け入れられるかもしれませんね。
そして、もし「投球制限」を導入するようなことになれば、アメリカの研究結果をもとに検討するのか、それとも日本独自で研究を行うのか分かりませんが、いずれにしても感覚的な話だけではなくエビデンスベースでの議論が必要となるでしょう。
アメリカのルールをそのまま、でなくても結構ですが学ぶべきことは多そうです。